TOPHOTASの目 分析・解説記事大学入試小論文
  大学入試小論文
3. 大学入試 小論文
2)小論文 入試科目としての特殊性

 小論文は,どのように他の入試科目と異なるのでしょうか.

高校には「小論文」という時間はなく,当然「小論文」専門の教師もいない.
 皆さんは中学はともかく,高校時代,「小論文」の書き方をどのような形で習いましたか?毎日の時間割の中に現代文や古文,日本史,英語等に混じって「小論文」という時間がありましたか?99%の方はなかったと思います.中には高校時代に習ったことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんが,そういった方も正規の授業中ではなく,課外に個人的に先生に習ったのではありませんか?つまり,中学はもちろん,高校には「小論文」という時間はなく,当然「小論文」専門の教師もいません.多くは国語の教師が担当しているにすぎない,というわけです.これは言ってみれば,大学に「国語」の時間がないのと似ていますね(詳細はこちら).中には小論文の書き方は学校では習わなかったという方もいらっしゃるかもしれません.

大学の先生にとって「論文」は,読む(=採点する)のも,問題を作るのも,まさに得意中の得意分野
 さて,それでは,大学ではどうでしょうか.もちろん,大学の講座にも,それが何学部であれ,「小論文」等という講座はありません.ところが,この「小論文」という文字をよくみると,「小」+「論文」という形になっていますね.この「小」はこの場合「字数が少ない」ことを意味しています.通常の「小論文」試験の制限字数は1200字から1800字です.では,「論文」の方はいかがでしょうか.「1-3)なぜ大学入試で小論文が課されるのか」でもお話ししたように,実は大学というところは,誤解を恐れず乱暴な言い方を許していただけるなら,究極「論文を読み,書く」ところなのです.「1-1)大学では何を訓練するのか」で,大学の先生は教育者であり,研究者だ,とお話しましたね.この研究者間の専門情報伝達手段が,「論文」なのです.大学の先生は論文を通じて,他の研究者とやりとりをしているのです.さらに,研究者というのは別に日本人だけとは限りません.世界中にいますね.日本人の研究者の間でしかやりとりをしないと井の中の蛙になってしまいます.当然,世界中の研究者とやりとりが必要です.そのためには,外国の論文を読む必要があるわけです.このため,大学では外国語が非常に重視されていますね.大学入試でも英語を始めとする外国語の配点が高いですし,大学院に進むと,一カ国語だけではなく,二カ国語,三カ国語が必要になってくる,というわけです.ただ,外国語の話は,ここでのテーマから外れますので,小論文の話に戻りましょう.
 ここで私が申し上げたいことは,大学の先生にとって「論文」は,読む(=採点する)のも,問題を作るのも,まさに得意中の得意分野といえるということです.国語の問題を作るのとはわけが違います.皆さん,ちょっと思い出してほしいのですが,英語や歴史や国語では,「難問・奇問」という話はたまに聞きますが,小論文では「難問」はともかく,「奇問」,つまり問題の質に対する批判が出たことはほとんどないと思いませんか.どこの大学も毎年かなりの良問を出してきていますね.

高校側の方がその対策に非常に苦慮している
 逆に高校側の方がその対策に非常に苦慮している,というのが実状でしょう.東大後期,慶應各学部,特にSFCの小論文に対して,高校としてどれだけ組織的に対応できているといえるでしょうか.もっとも,これは一概に高校を責めるわけにはいきません.小論文が文科省のカリキュラムに取り込まれていない以上,高校としても組織的に取り組むことは難しいからです.

実技試験(基本的能力)と実技試験(専門的能力)
 例えるなら,小論文というのは,音楽大学や美術大学の実技試験に似ています.ご承知の通り,音大に入るためには,小さい頃から例えばバイオリンのように自分の専攻する楽器はもちろん,ピアノ,楽典,ソルフェージュ,聴音等について,専門家について訓練しなければなりません.美大についても同様です.要は学校(中学や高校)外で学ぶのです.当然,これらは中学や高校のカリキュラム外のことですが,大学でメインに学ぶことや,その基礎となることだからです.
 これを例えば法学部に例えると,ピアノ実技試験(基本的能力)に相当するのが小論文,バイオリン実技試験(専門的能力)に相当するのが法律の試験ということになりましょう(ピアノが専門の場合はもちろん除きます).ただし,高校生は法律について単独では勉強していません.「政治・経済」でわずかに憲法についてごく薄く学習する程度です.そこで,高校生が3年間勉強した国語や英語や歴史等の試験で代えようというのが,今の大学入試制度なわけです.このため,大学の先生方が専門外の科目について入試問題を作ることになってしまっている,という点は「2-2)大学入試 作問者側から見た入試問題」でお話した通りです.

 このように大学の先生にとって小論文は,まさに専門分野といってよいわけです.対して高校側には制度的に指導体制がとられていない分野でもあるわけです.

注)紛らわしいので,本稿では下記表記統一します.
 ※1. 高校の「地歴科」「公民科」→「社会」もしくは「社会科」
 ※2. 旧国公立大学,国公立大学法人→「国立大学」もしくは「国公立大学」


続く
 

 
大学入試小論文
1. 大学入学後に必要となる力
1) 大学では何を訓練するのか
2) 「科学」を研究するには何が必要か
3) なぜ大学入試で小論文が課されるのか

2. 大学入試
1) 大学入試 入学試験の性質
2) 大学入試 作問者側から見た入試問題

3. 大学入試 小論文
1) 小論文は他の教科・科目とは根本的に違う
2) 入試科目としての特殊性
3) 大学入試に小論文が導入された経緯1
4) 大学入試に小論文が導入された経緯2
5) 小論文の分類 課題文型と一行問題型


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